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電球の明かりのもとで作られる
木目の美しい飛騨春慶塗
その技術を未来に伝える

HIDABITO 009
西田木工所
西田 恵一氏

取材
社名:
西田木工所
住所:
岐阜県高山市大新町2丁目198
電話:
0577-32-4627
その他の施設 店舗
社名:
(有) 福寿漆器店
住所:
岐阜県高山市桜町72
電話:
0577-32-0290
どんな風に技術を学んだのか尋ねてみると、まずは木の選び方から始まるのだという。

「木の種類によってももちろん特徴が全然違いますし、どの程度乾燥させるかも重要になってきます。うちはずっとひのき材を中心にかまってきた(かまう=扱う)んだけど、途中から杉もかまうようになった。杉の木は粘りの少ない物もあるので、曲げる時にはすごく気を遣うんです。まあその辺りは塩梅で、学ぶというよりもやってみないと分からない。駆け出しの頃は、ずっと親父が作業しているところを見とったんですわ」

同じ種類の木材でも天然ものとそうでないものとは、雲泥の差があるようだ。素人には分からない差ですよね、と言うと「いやいや歴然の差ですよ」ということで実際に触らせてもらい驚いた。見た目の美しさもさることながら、適度に水分を含んだなめらかな肌触りは、聞く通り誰にでも分かる違いがある。「その分天然ものはお値段がするんです(笑)」と含み笑いで西田さんは語る。

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そんな飛騨春慶の中でも、特に一般層に馴染みのあるわっぱの弁当箱の製作風景をみせてもらう。製材所で丸太をひいてもらい、2 年ほど乾燥させてから使う板は、熱湯に浸すと驚くほどしなやかに曲がる。熱すぎるとアクが出すぎてしまうので、湯加減は風呂以上に重要だ。その後、「コロ」と呼ばれる円形の型で品物の大きさに合わせて丸みをつけて加工する。

「蛍光灯やLED はうちの工房にはひとつもないんです。点滅してる明かりだと、木の肌が見えんのですよ。だからずっと電球。最近じゃあまり見かけないので、困ってるんです」

取材とはいえ作業を始めてしまった手前、キリのいいところまで手を止めるわけにはいかない。椅子の上で体を傾けながら、最後に西田さんはこう語った。

「木地師という仕事をしているからには、春慶に限らず、技術を伝えて残していくべきだって思ってるんです。だから高山や美濃で曲げ物を、教えたりしてるんですよ。そこで学んだ人の中から春慶を担ってくれる人が出てきたら、こんなに嬉しいことはありませんねえ」

作業用の裸電球にオレンジ色の光が灯り、辺りに積み上げられている木材に当たる。そのおだやかな反射光が、ぼうっと工房を照らし出していた。

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取材
社名:
西田木工所
住所:
岐阜県高山市大新町2丁目198
電話:
0577-32-4627
その他の施設 店舗
社名:
(有) 福寿漆器店
住所:
岐阜県高山市桜町72
電話:
0577-32-0290