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ブリ街道を越え
届けられた海の幸を
山間の小京都でいただく

HIDABITO 007
みちや寿司 おきむら家
沖村 道也さん

取材
社名:
みちや寿司 沖村家
住所:
岐阜県高山市相生町25
電話:
0577-32-0383

そんなみちや寿司で食べられるのが、飛騨ならではの寿司たち。いくらブリ街道があると言っても、移動時間の関係から足の早い魚は食べられない。さらに高山の人たちは商人街ということで元来グルメが多く、生臭い魚は特に嫌われたそうだ。

そのためポピュラーだったのが、カジキやアラと呼ばれる白身魚。ブリもほどよく熟成されたため、好まれたらしい。しかしこんな工夫をしてもどうにもならないのが、厳しい寒さ。そこで昔から食べられてきたのが、温かいお寿司である「蒸し寿司」だ。

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「生物を一切使わないのが特徴です。昔は、タラやタイのでんぶ、酢レンコン、薄焼き卵、かんぴょう、しいたけ、だけをのせてました。今はエビや生卵を乗せて、せいろで蒸し上げます。冷めないよう春慶塗の器に入れるのが、うちのやり方なんですよ」

そうやって目の前に出されたのは、目にも鮮やかな一品。道也さんが山で採ってきたという岩茸の黒が、バシッと色を引き締める。

口に入れるとほかほかの酢飯からいい香りが湯気とともに立ち上り、生卵を崩すせば、 さっと広がった黄身がすべてをまろやかに包み上げる。これは、しみじみと旨い。聞けばこの春慶塗、80年以上使い続けられているとのこと。否応なくありがたみが増す。

もう1つの名物が、道也さんが「飛騨トロ」と名付けた飛騨牛を使った寿司だ。その昔、肉屋さんから「刺身が旨い」と聞いて感銘を受けた道也さんだが、時は1980年代。まだまだ牛肉の生食は一般的でなかったため、「飛騨にもトロがあるぞ」という気もちから命名。しかし、それを広めるのがなかなか難しかったそうだ。

「当時食にまつわる町おこしの審査会があって、持って行ってもなぜか不評でね。負けるものか、と思って町の皆さんにお出しししたんです。アンケートもとったりしてね。そうしたら大好評でメディアでも取り上げてもらって、今では知らん人もおりませんね」

お店では、シャリの上に玉ねぎのスライス、さらにローストした飛騨牛をのせ握る。
にんにく醤油をかけ、最後に焼きゴテを押すことで、甘い脂の香りがなんとも食欲をそそる。

取材中も手を動かしながら、間髪入れずに地元の食文化について語ってくれた道也さん。「飛騨トロ」だけでなく、トマトの寿司など新たな寿司を開発する情熱を持った横姿を撮影しようと厨房に入ると、神棚の裏にこんな言葉が書かれた紙が貼られているのを見つけた。

新しい料理の発見は 新しい天体の発見より人々を幸福にする 沖村道也

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取材
社名:
みちや寿司 沖村家
住所:
岐阜県高山市相生町25
電話:
0577-32-0383