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奥飛騨生まれ奥飛騨育ち
飛騨高山について
新たな挑戦の始まり

HIDABITO 006
温泉民宿 お宿のざわ
野沢 陽子さん

サービスとは、企画です

それぞれ泉質の異なる5つの温泉からなる奥飛騨温泉郷。その中でも最も南に位置する新平湯温泉エリアにはこの日、大粒のぼたん雪が降り続いていた。懐かしい縦型のポストや、沿道に並ぶお地蔵さんに雪が積もっている光景は、当地の厳しい寒さを物語りながらも、反面、どこかあたたかで懐かしい印象を受ける。

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そんな白銀の世界から流れ込む単純泉の源泉は、リウマチや打撲などによく効き、多くのファンを数えている。その中でも人気の民宿が、ここ「温泉民宿 お宿のざわ」だ。

「民宿の魅力の1つにリーズナブルな価格、というものがありますが、私はお客さんと私たちスタッフの近い距離感だと思っています。常連さんたちはいらっしゃる時、『ただいま〜と声をかけてくださるんですよ」

そうはつらつと話してくれたのが、元気な笑顔が印象的なこの宿の女将・野沢陽子さん。生粋の奥飛騨生まれ奥飛騨育ち。子どもの時からこの温泉地で、様々な人と出会ってきた。

「取材などで『こちらの売りはなんですか?』なんて聞かれると、素直に『それは私自身ですね』なんて答えちゃうんです(笑)。でも冗談ではなくって。奥飛騨に来たら温泉があるのは当たり前。お料理でも飛騨牛や朴葉味噌はどこでも出します。じゃあ他にどこで喜んでもらえるかと考えてみると、やっぱり人なんじゃないかなって」

柔らかなトーンの裏に、重みが感じられるこの言葉。だが意外にも、この民宿はお嫁に来た旦那さん一家が43年に渡り経営してきた宿なのだ。サラリーマン務めの旦那さんに変わり手伝っているうちに、女将となって15年。キャリアは合計25年にもなる。

「祖母がもともと旅館をやっていたせいで、子どもの時からそこでお布団を上げるお手伝いはよくしていました。家業も床屋でしたので、普段から色んな人が出入りする環境だったんです。そのせいかな、人見知りもしませんでした」

25年の中で養われたのは、お客さんの要望をいち早くキャッチする感性だ。距離感を大切にすることは、決して馴れなれしく振る舞うことではない。女将自身が全てのお客さんを俯瞰的に見渡せるという、民宿ならではの規模感から生まれる利点を活かした気配りを心がける。中でも、最も大切にしているのがチェックアウト。

「終わりよければ全てよし、ではないけど、最後が1番印象に残りますよね。なので、朝はほとんどお見送りに専念しているんです。そこで初めてちゃんと話ができたお客さんが、実は私のブログのチェックをしてくださっていたことがわかったり。今では大切なリピーターさんの1人です」

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