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飛騨を愛する山の名人が
40年かけて築いた
幻想世界

HIDABITO 005
氷点下の森/秋神温泉旅館
小林 繁氏(享年79歳)

取材
社名:
氷点下の森/秋神温泉旅館
住所:
高山市朝日町胡桃島355(秋神温泉旅館内)
電話:
0577-56-1021

「他にも色々アイディアがあるんですよ。ほら、これは栃の実。これを頭に括りつけた器に入れて、落ちないように運ぶ栃の実レースっていうのもあります。あと、朴葉味噌の朴葉を使った飛行機なんかもつくれるはず」

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もともとは料理人としてキャリアをスタートさせた小林さん。経営する秋神温泉旅館では、自ら収穫したきのこや山菜を使った料理に腕をふるう。その評価は高く、2008年には「岐阜の名工」を受賞。2015年には「飛騨高山の名匠」にも認定されたほどだが、彼の興味はとどまることを知らない。

「今ジビエがブームでしょう? そういった獣肉を1番おいしく食べていたのは、縄文人のはずなんです。彼らのやり方をヒントに、今年は焼いたお肉を黒曜石で切り分けて食べることをしてみたいんですよ」

独自に漬けた木の実酒の瓶を背景に、様々なアイディアと、豊富な山の知識をどんどん語ってくれるその輝く目に思わずたずねてみた。どうしてそんなに、新しいことが浮かんでくるんですか?

「これはね、全部飛騨の山と森が教えてくれたことなんです。子どもの頃からここいらの野山を駆け巡っていたから、そう、森が私の学校。今やっていることは、全部その積み重ねなんですよ」

そんな森の学校で得た知識は、教育機関からも頼られるほどのもの。2014年に噴火した御嶽山にはいち早く出向き、噴火口を観察しすぐに火山灰を採取。知り合いの大学教授に提供した。

「科学技術による考察も大切だけど、1番重要なのは先人が体験から得た知恵を、どう現代に紐解くか。知恵袋を丁寧にほどいて、料理にしたり、森を歩いたり。そうやって私が得たものを、今度は後の世代に渡していかないといけないね」

そう笑顔で語ってくれていたところに、突然の来客が現れた。どうもマカオから来た観光客らしい。たどたどしい日本語にも心よく応じ、カウンターに入ってコーヒーを淹れ始めた。

「このね、シュガーを齧りながら飲む、グッドよ!」

おすすめのコーヒーの飲み方をレクチャーしながら、寒さで肩を震わせる来客のために目で薪ストーブの火加減を探る。氷点下の森の主は、生き字引のような知識を持つ優しい山の名人だ。

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取材
社名:
氷点下の森/秋神温泉旅館
住所:
高山市朝日町胡桃島355(秋神温泉旅館内)
電話:
0577-56-1021