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飛騨を愛する山の名人が
40年かけて築いた
幻想世界

HIDABITO 005
氷点下の森/秋神温泉旅館
小林 繁氏

全部飛騨の山と森が教えてくれたことなんです

JR高山駅から、車で約40分。人里を少し離れ、シーンとした静けさに包まれた先に待っていたのは、想像を遥かに凌ぐスケールで構成された「氷の森」だった。

「高度経済成長期からこのあたりもリゾート開発が始まったんだけど、観光資源があるわけじゃないでしょう? それで、1人で何かできないかと思って、昭和45年から始めたんです」

秋神温泉旅館の主・小林繁さんがそう語るのが、夜間には-10°Cともなる寒さを活かした観光名所・氷点下の森だ。

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アイディアの源泉は小学生の頃。4キロもの山道を歩いて通学していた時に見かけた美しい岩清水の氷をヒントに、40年もの時間をかけ規模を拡大。現在では全長8500mという途方もない長さのホースが張り巡らされ、4,5mにまで成長した氷柱は太陽光を反射し青白い光を放つ。モーターは一切使わず、全て水の圧力を利用しているというから驚きだ。

「うまく氷柱をつくるために、水の粒の大きさなど緻密に計算しているんだけど、最初はどうもおかしな人だと思われていて(笑)。でも今では、たくさんの人達が賛同してくださって『氷点下の森を守る会』をつくってくれました」

1番の見どころは、辺りが暗くなった頃にスタートするライトアップ。小林さんが自らアナウンスを行い、一箇所ごとにスイッチを押すと、徐々に氷柱に明かりが灯っていく。少し経ってから周囲を見渡せば、思わず「あっ」と声がこぼれてしまうほど、 昼間とはまったく印象の異なる幻想の世界に包まれる。

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「老若男女、色んな方たちに喜んでもらっています。特に若いカップルの方なんか、おもしろいポーズで写真を撮っていかれますね。でも滑りやすいから、彼氏には『ちゃんと彼女の手をとってあげてね』なんてお話するんですよ」

そんな氷点下の森が最も活気を帯びるのが、毎年 2 月の第2土曜日に開催している「氷祭り」。小林さんの考案した凍るシャボン玉や花火大会、地域の伝統芸能やライブ・コ ンサートなども開催される。

特に凍るシャボン玉は、開発に苦労した。人が口から吹くと、体温が吐息に移るためなかなかきれいに凍らないのだ。結果、独自にシャボン玉製作機をつくりあげるなど、ひとつひとつの企画に余念がない。