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標高2156m
日本の屋根から
山々の魅力を伝える

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新穂高ロープウェイ
和田 梢さん

山がいつも見下ろしてくれるから

きりりと冷えた空気の中、360度の大パノラマが広がる。

真正面、北西の方角に見えるのが岐阜県単独最高峰の笠ヶ岳。標高2,898mに及ぶ山嶺から左右に視線をやれば、北アルプスの山稜を見渡せる。南に活火山の焼岳。北東では、尖った小槍を従えた槍ヶ岳と、岩稜ジャンダルムが高々とした肩を並べる。フランスで発行されるガイドブック、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン 』でも二つ星で紹介された眺望だ。

アルプス一万尺小槍の上で――誰もが知るあの歌詞の通り、一万尺(約3000m)級の見事な山々が出迎えるここが、西穂高口駅展望台だ。新穂高ロープウェイの終点、西穂高口駅舎の屋上に展開されており、西穂高岳(2909m)の登頂口にもあたる。その標高は2,156 mで、遥かな山並みと目線の高さが揃う。

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「青空の日は、加賀の白山連峰(石川県と岐阜県にまたがる標高2,702mの山)までくっきり見えるんですよ」

西方を指差して教えてくれたのは、新穂高ロープウェイで働く和田梢さん。短大を出て新穂高ロープウェイに就職し、ガイドの経験等を経て今は経理・広報を勤める。奥飛騨に生まれ育ち、地元の魅力の発掘と発信に力を入れる頼もしい人材だ。

「秋は気候も自然も素晴らしいシーズンなんですけど、日が短いのが難点ですね。これから冬になると、雪かき業務で社員全員がかりだされます。かなり大変です」

ここで働く人々の仕事の中心は“山”だ。日本を代表する山々の自然は険しい。特に冬は気温がマイナス19度にもなる。

「ガイドの時の方が、大変なことは多かったですね。ロープウェイの運行の間、お客様の命を守るのも私たちの仕事なので。トラブル発生時に乗客を安全に降ろすための総練習が年に何度もあって、今でも勉強は欠かせません。きついことをあげれば色々あります。でもお客様の笑顔とか、ここの景色を見られる喜びはやっぱり大きいです」

新穂高ロープウェイは、新穂高温泉駅〜鍋平高原駅間を通る第1ロープウェイと、しらかば平駅〜西穂高口駅間を結ぶ第2ロープウェイの総称。日本で唯一の二階建てゴンドラは、一度に最大120人を運ぶことが可能だ。起点となる新穂高温泉駅と、西穂高口駅までの標高差は1,036メートルで全国一位だという。

「山の素晴らしさはもちろんなんですけど、ロープウェイのことも楽しんでいただきたいです。私、“索道オタク”を増やしたくて」

ロープウェイは日本語で索道と呼ばれる。日本全国のスキー場やリゾート地で見かける存在だが、その“乗り物”としての個性にスポットが当たる機会は少ない。

「移動速度、高度、鉄塔通過時の揺れ具合など、実はロープウェイにもそれぞれ色んな特徴があって、鉄道や航空機と同じように楽しめる乗り物なんですよ。鉄道オタクみたいに、“索道”オタクがメジャーになったらもっとここも盛り上がるなと思って。もっとロープウェイにも注目していただけるように、情報発信の仕方も考えています」

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