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静寂の中に
生命のぬくもり
山々に囲まれた伝説の湯

HIDABITO 002
平湯民俗館
若月 加代子さん

冬も、スキー客などがわざわざここに足を運ぶという。こじんまりとした日帰り入浴施設だが、それでも四季折々の変化を求めてたくさんのリピーターが訪れる。どこでこの場所を知るのか、海外から訪ねてくる客も増えたとか。「私は英語なんて喋れないから、外国人のお客さんに何か聞かれた時はジェスチャーでなんとかします。あとは、英語が話せるお客さんに助けてもらったり(笑)。そういう人たちに助けられながら、見守られながら働いているんですね」 答えながらも、温泉から出て来た女性客と親しげに手を振り合い、会釈を交わす。

「リピーターさんとはすっかり顔なじみになっちゃって。お友達として仲良くさせてもらってる方もたくさんいるんですよ」

資料館の方に上がろうとすると、タタキに置かれたスリッパのうち、一組が一足しかないことに気がついた。

「これはねえ、キツネがこっそり持っていっちゃったんです。野生動物も色んなのがちょこちょこ来ますよ」

資料館の中に展示されているのは、飛騨で使われてきた農機具や衣類。実際に使い込まれてきた囲炉裏は、今も現役で薪を燃やしている。

「ここでも毎日必ず火は入れています。営業時間中は絶えないように気をつけてるけど、時々消えちゃってるかな」

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木材煙には、茅葺き屋根の資材を有機化合物で覆い、虫除けや殺菌を促す効果がある。そのため昔の民家は、茅を傷ませないよう、常に囲炉裏に火を焼べていたそう。

「実際に火の入ってる囲炉裏って最近見る機会がないから、お客さんも喜びますね。『この匂い落ち着きますねー』ともよく言われるけど、私なんかはもう、煙の匂いが身体にしみついちゃって。人ごみの中でも私の匂いってわかるんだって(笑)」

囲炉裏は食事処にもある。あたたかい湯で流した後、カモシカの皮で作られた敷物に座り、囲炉裏の傍らでゆったりと食事や飲み物をとれば、なんとも贅沢な休憩時間の完成だ。